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好きな映画について、グダグダ語りますので悪しからず

イースタン・プロミス [DVD]
イースタン・プロミス [DVD]
  • 発売元: Happinet(SB)(D)
  • レーベル: Happinet(SB)(D)
  • スタジオ: Happinet(SB)(D)
  • メーカー: Happinet(SB)(D)
  • 価格: ¥ 3,121 (22% OFF)
  • 発売日: 2008/11/14
  • 売上ランキング: 1048
  • おすすめ度 5.0

監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ、ヴァンサン・カッセル、アーミン・ミューラー=スタール

クローネンバーグ&ヴィゴが贈る抑制の効いた暴力の世界。以前のエントリにも挙げた「ヒストリー・オブ・バイオレンス」でタッグを組んだD・クローネンバーグ監督とV・モーテンセンが本作でも再び裏社会で生きる人間を描いています。ロンドンを舞台にとある事件からロシアン・マフィアを相手にしてしまったロシア系の血を引くアンナ(ナオミ・ワッツ)。またマフィアの一員でありながら結果的に助ける複雑な雰囲気を醸し出すニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)を軸に物語は展開します。

ヴァンサン・カッセル演じるマフィアの息子キリルの壊れっぷりが凄いですが、いちばん怖いのはアーミン・ミュラー=スタールの好々爺の様相でありながら、冷酷無比なキャラですね。これは見物です。また歴史に残ると言っても過言ではない、サウナでのヴィゴ・モーテンセンの全裸殺陣はこれこそ見物です。銃は使わず、ナイフで殺害に及ぶというスタイルが画面上から痛さを感じさせますね。

前作「ヒストリー・オブ・バイオレンス」は後半からややアクションものに成り下がっていたきらいもありますが、今作の後半はダレることなく、寧ろ静かなトーンでクライマックスを迎えるのが良いですね。

 

ヒストリー・オブ・バイオレンス
ヒストリー・オブ・バイオレンス
  • 発売元: 日活
  • レーベル: 日活
  • スタジオ: 日活
  • メーカー: 日活
  • 価格: ¥ 3,241 (19% OFF)
  • 発売日: 2006/09/08
  • 売上ランキング: 7864
  • おすすめ度 4.0

監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ヴィゴ・モーテンセン、マリア・ベロ、エド・ハリス、ウィリアム・ハート
先ずはヴィゴ・モーテンセンの「ロード・オブ・ザ・リング」で見せたライトな演技ではなく、「インディアン・ランナー」のダークな雰囲気が今作は近しいかと思います。鋭利な雰囲気を見せる演技がヴィゴ・モーテンセンは良く似合っていて、近々DVD化される今作と同じクローネンバーグ監督作「イースタン・プロミス」も同じ類のようです。

難解で変態系監督(笑)であるクローネンバーグ監督にしては分かり易い内容ですが、テーマ自体は普通ではありませんね。暴力性と性描写は外すことは出来ないのか、元マフィアと言うより特殊工作員的な身のこなしで暴漢を瞬く間に斃す姿や、虐められていた息子がキレて相手2人を血まみれにしてしまうところなどのバイオレンス・シーンはいつものこと、マリア・ベロ演じるオクサンのチアガールコスプレしながらのセックスや、殴り合いの喧嘩から激しいセックスに移っていく(それも階段で)ところなどクローネンバーグ監督ならではの表現が満載です。

アシュトン・ホームズ演じる息子ジャックの学園生活のシーンもありますが、先述した虐めにキレて、父親の遺伝子を受け継いでいることを暗示させる見せ方が良いですね。中盤から終盤に向けての展開がやや雑な気がしますが、エンディングの食卓のシーンがとても印象的で気に入りました。

しかし、いい人役が多いエド・ハリスの凄味のある表情は良いのですが、いかんせん部下共々みなヘタレ過ぎてマフィアの怖さがあまり出ていない気がしましたね。ウィリアム・ハート一頭は言わずもがな。それよりも冒頭に出てきた2人組の暴漢の方が衝動的かつ無計画に人を殺しているので、こちらの方が視覚的にも怖い印象を持つのではないかと・・・。

 

「ボンボン」

Posted In: . By kazutov sinofsky

ボンボン
ボンボン
  • 発売元: アミューズソフトエンタテインメント
  • レーベル: アミューズソフトエンタテインメント
  • スタジオ: アミューズソフトエンタテインメント
  • メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
  • 価格: ¥ 3,416 (14% OFF)
  • 発売日: 2007/10/26
  • 売上ランキング: 14522
  • おすすめ度 4.5

監督:カルロス・ソリン
出演:フアン・ビジェガス,ワルテル・ドナード
無類の犬好きに贈るアルゼンチン発脱力系ロードムービー。
まず、DVDパッケージのデザインの良さから洒落いて癒しを兼ねたストーリーに受け取れますが、その効能は半分程度かと思います。脱力したテンションは絶えず感じられますが、癒しとなると少し疑問が残りますね。主人公は実名で演技をするフツーのオジサンであるファン・ビジェガスとアルゼンチン産の猛獣を対象とした狩猟犬ドゴ・アルヘンティーノのコンビです。この厳つい犬は本来闘犬を兼ねた狩猟犬である為、非常に力強いのですが、本作で演じるドゴ・アルヘンティーノはきちんと教育を受けていない為、かなりダメ犬のようです。そこがある意味癒しを兼ねた存在とも言えなくはありませんが・・・。

とにかく動作はカワイイです。ですが、脚本に沿った作られた演技が無いため、この犬の演技は殆どありません。物語自体も50歳を過ぎたオジサンが職と住むところを追われ、お人好しの性か人助けをしたことによりドゴ・アルヘンティーノを贈られ(押しつけられが正解かも)、そこからわらしべ長者的に話が大きく展開していきます。その展開はわくわくするのですが、同時に不安を掻き立てるなにかがあって観ていて何故か落ち着きませんでした。劇中笑わせる箇所はいくつかあって愉しませてくれるのですが、終演を迎えて思ったのが、主人公ファン・ビジェガスはなにがしたかったのだろうか?ということです。一応のオチは用意しているのですが、和みはするものの「へぇー」で終わってしまうのが少々残念かと。

音楽と映像は自分好みなので、表層的な部分だけでも充分愉しめますが、もう少しドゴ・アルヘンティーノの個性を引き出した演出があっても良かったのでは?とも思います。たしかにドゴ・アルヘンティーノは厳つくてカワイイです。実際は身体がデカすぎて引いてしまうかも知れませんけどね(笑

 

プライベート・ライアン
プライベート・ライアン
  • 発売元: パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
  • レーベル: パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
  • スタジオ: パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
  • メーカー: パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
  • 価格: ¥ 1,500
  • 発売日: 2006/07/07
  • 売上ランキング: 914
  • おすすめ度 4.5

監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:トム・ハンクス、トム・サイズモア、エドワード・バーンズ、バリー・ペッパー、アダム・ゴールバーグ
冒頭20分間は他の戦争映画やアクションものとは異なった、非常に生々しい銃撃戦で、スローモーションで“死”を演出することなく手足が吹き飛び、腸がぶちまかれるなど容赦ない描写にただただ圧倒されます。第二次世界大戦の転換期となったノルマンディー上陸作戦の熾烈な戦いをくぐり抜けたトム・ハンクス演じるジョン・ミラー大尉率いる部隊にマット・デイモン演じるジェームズ・ライアン二等兵なる者の救出を命じられ、さらなる死線に向かった行く物語です。ライアン二等兵以外の兄弟はすべて戦死した為、ライアンを母親の居る故郷へ連れ戻す為の作戦をミラー大尉に言い渡されたと言うのが大きな目的です。

ひとりの人間を救出するのに8人の人間がそれぞれ命の危険を曝しながら、行方不明となっているライアンを捜していく事自体に大きな矛盾と皮肉が表れていますね。バリー・ペッパー演じるジャクソン二等兵が「人的損失だ」と言うシーンがありますが、自分を過大評価している部分はあるにしても8人を導入して1人を救出する非論理的な指令には国の見えざる思惑が入り交じっていることに気がつかされます。クリント・イーストウッド監督の「父親たちの星条旗」でも国民の士気昂揚の為、ひとつの施策として幾人かの人間を“英雄視”させることがありましたが、今作でも近しい意味合いがあるのではないかと思います。ライアン4兄弟全員戦死となると国民が悲観し、戦争継続の支持(戦費調達)が得られなくなるのを回避したいが為という見方をしてしまいます。もっとも実際ライアン4兄弟全員戦死となった場合、アメリカ全土にその訃報が行き渡って皆が哀しみに暮れるのか?と言う部分もあるのですけどね・・・。

その矛盾した作戦に皆が疑問と不満と不安を抱きながらも、それぞれ死力を尽くして任務を遂行する姿勢には感動させられます。リドリー・スコット監督の「ブラックホーク・ダウン」でも頼りがいのある役柄を演じていましたが、今作でも発揮しています。そういえば、「ブラックホーク・ダウン」もプライベート・ライアンみたいな展開でしたね・・・。いずれにせよ戦争は無益ですよ、軍需により産業が成長するというのも昔の話ではないのでしょうかね?

 

「ゾディアック」

Posted In: , . By kazutov sinofsky

ゾディアック 特別版
ゾディアック 特別版
  • 発売元: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • レーベル: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • スタジオ: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 価格: ¥ 1,500
  • 発売日: 2008/07/09
  • 売上ランキング: 1670
  • おすすめ度 3.5

監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr.
実在の事件を「セブン」、「ファイトクラブ」のデヴィッド・フィンチャーが監督し、「ドニー・ダーコ」や「ブロークバック・マウンテン」のジェイク・ギレンホール、近作ではフェルナンド・メイレレス監督の「ブラインドネス」に出演したマーク・ラファロ、現在公開中の「アイアンマン」「トロピック・サンダー」が好調なロバート・ダウニー・Jr.が主だったキャラクターで出演しています。

デヴィッド・フィンチャーならではの陰鬱とした暗めのトーンで、実際未解決の事件であることから全体的にすっきりしない印象を持ちますね。スマートに解決できる事件では無かった為、グダグダ感があるのは否めないですが、展開自体も中盤以降事実と相まってテンポが悪く感じてしまいました。ただ、今作は実在したゾディアックの行為よりも、彼に翻弄された人間たちに焦点をあてている為、グダグダ感が翻弄されている意味だと捉えた方が良いのかも知れませんね。

事件に20年近く付き合ったのはパズルオタクのジェイク・ギレンホール演じるグレイスミスで、担当刑事だったマーク・ラファロ演じるトースキーや、ロバート・ダウニー・Jr.演じる記者エイブリーも事件から離れ、グレイスミス自身も家庭崩壊の危機に見舞われても事件に執着し続けますが、2004年に未解決のまま捜査終了となり物語自体も平坦なまま終焉を迎えるのが評価が分かれるところですね。もっとドキュメンタリーのテイストを強めた方が個人的には良かったのではと思います。

今作とは関係がありませんが、先日読んだ「チャイルド44」が旧ソ連で実在した連続猟奇殺人に着想を得た物語で近々リドリー・スコットが監督して映画化するそうですが、テーマもですがソ連(ロシア)という寒く暗い環境を映像化するにはデヴィッド・フィンチャーの方が合っているような気がしています・・・。小説の内容自体は凄く面白かったので映画も期待してます。

 

インディアン・ランナー
インディアン・ランナー
  • 発売元: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • レーベル: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • スタジオ: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2007/04/18
  • 売上ランキング: 13187

監督:ショーン・ペン
出演:デヴィッド・モース、ヴィゴ・モーテンセン、チャールズ・ブロンソン、デニス・ホッパー
個性派俳優ショーン・ペンの初監督作品。脚本も自身が手がけていてショーン・ペンらしい人の性というか業を表した鋭利な内容です。出演者も豪華でそのラインナップだけでも見応えがあるかと思います。17年前の作品のため、出演者が皆若いです。「グリーンマイル」や「コンタクト」で典型的なアメリカの善人を演じたデヴィッド・モースがここでも(こちらの方が先ですけどね)善良で実直な警察官ジョーを演じ、弟フランク役には「ロード・オブ・ザ・リング」のアラルゴンで一躍有名になり、近年はデヴィッド・クローネンバーグ作品に出演しているヴィゴ・モーテンセンが心を病んで粗暴となったベトナム帰還兵を演じています。性格と行動がまるで正反対な兄弟の物語ですが、ヴィゴ・モーテンセンの不安と不満を綯い交ぜにした雰囲気やギラついた表情が圧倒的で物語を支配しています。

父親役のチャールズ・ブロンソンは枯れた演技が素晴らしく、やはり存在感がありますね。真夜中に部屋の取り付けのネジが緩んでいて誰かが怪我をするから危険だと電話してくるシーンは、後に来る出来事に余韻を残します。母親役のサンディ・デニスは劇中ずっとキャシー・ベイツだと思っていました・・・。翌年に亡くなられていたんですね。酒場のマスター役にデニス・ホッパーや、ジョーの妻であるマリアの教え子の彼氏?旦那?にベニチオ・デル・トロが出ていて、2人ともめちゃくちゃ若いのに驚きましたね。とくにベニチオ・デル・トロ。ユージュアル・サスペクツでもそうでしたが、線が細いです。ここ最近の印象とは別人ですね。フランクの彼女をパトリシア・アークエットが演じていましたが、垢抜けない感じでなかなか良かったです。出産シーンが意外と生々しくて驚きました。同時刻に起こしたフランクの行動に合わせての演出と言うことなのでしょうかね?

正直結末はそれで良かったのか?と思う部分が強いですが、全体を通しての展開はすごく良かったです。また、所々街並みを映すシーンがありましたが、撮り方が個人的には気に入りました。ガソリンスタンドでのシーンはさらっと流してしまう撮り方が意外性があって良いですね。印象に残る作品でした。

 

ブルー・レクイエム
ブルー・レクイエム
  • 発売元: バップ
  • レーベル: バップ
  • スタジオ: バップ
  • メーカー: バップ
  • 価格: ¥ 5,040
  • 発売日: 2005/10/21
  • 売上ランキング: 59130
  • おすすめ度 4.0

監督:ニコラ・ブークリエフ
出演:アルベール・デュポンテル,フランソワ・ベルレアン,ジャン・デュジャルダン
本国フランスでヒットして「ミニミニ大作戦」、「交渉人」のF・ゲイリー・グレイがハリウッドリメイクで監督を主人公アレックスを「ミュンヘン」、「ハルク」のエリック・バナが演じるそうです。おそらくとても分かり易い内容になるのではないかと思いますが、エリック・バナの愁いを帯びた表情は今作の主人公に似合っているのでちょっと期待しています。

それはともかく、今作は派手さは無く淡々とした印象を持つ内容ですが、なかなか面白かったです。いわば主人公アレックスの復讐劇なのですが、必要最低限でしか説明を物語に盛り込まない為、展開がわかりにくいかも知れませんね。アルベール・デュポンテル演じる主人公アレックスがなぜ経営状態や待遇が不安定で、現金輸送という業務から命の危険も高い職に就いたのかが、次第に明かされていく点も淡々としていて良いです。不必要に悲劇や感動を煽るのではなく、淡々と展開していく方が、アレックスの苦悩が感じられるかと思いますね。現金輸送会社の同僚たちのキャラクターもよく書き込まれていてメリハリが効いています。

銃撃戦や他の襲撃シーンもハリウッドのような派手さはなく、乾いた感じの展開です。カメラもあちこち視点を変えることなく、ドキュメンタリー風にも見える撮り方なので寧ろリアルに感じられますね。ただ、現金強奪する犯罪グループは計画性を持って行動する割にはビジネス的ではないなーとも感じ取れましたね。終盤の襲撃戦など、後のこと考えていないのでは?と思いましたけどね。片っ端から銃を撃ちまくって殺しまくって大丈夫?犯罪グループもプロなら必要最低限の武力行使で済むのではないかと思うのですが・・・。ハリウッドや韓国映画にありがちなサービス過剰な感動の押しつけがないので、渋い余韻が残ります。女っ気が無いのは賛否両論でしょうかね?

 

「ダージリン急行」

Posted In: . By kazutov sinofsky

ダージリン急行
ダージリン急行
  • 発売元: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • レーベル: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • スタジオ: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 価格: ¥ 3,416 (14% OFF)
  • 発売日: 2008/09/03
  • 売上ランキング: 946
  • おすすめ度 5.0

監督:ウェス・アンダーソン
出演:オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディ、ジェイソン・シュワルツマン
「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」「ライフ・アクアティック」を監督したウェス・アンダーソンの作品では定番である「家族再生」をテーマにしたロード・ムービー。オーウェン・ウィルソン演じる長男フランシス、エイドリアン・ブロディ演じる次男ピーター、ジェイソン・シュワルツマン演じる三男ジャックのホイットマン3兄弟。父親の死をきっかけに絶交状態だった関係を修復する為にフランシスの提案でインドを旅するダージリン急行に乗り合わせ、そこで繰り広げられる珍道中が主な内容です。

家族再生(ここでは兄弟関係の再生に限っているけど)のストーリーは、もはや新しくもなくまさに定番的なものですが、ウェス・アンダーソンだと何故か気になってしまいます。この作品に限ったことでは無いのですけど、一見まったりとしたユルい印象を作品に感じますが、どこかしらに神経質的な緊張感が漂っていて3兄弟の関係に不協和音が絶えず鳴り響いているようにも受け取れますね。道中は異文化コミュニケーションの衝突で、そこから3人の関係を修復する糸口に繋がるのですが、やや彼らの自己中心的な言動が個人的には不快感を憶えます。「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」や「ライフ・アクアティック」でもそれぞれのキャラは自己中心的な部分があるのですが、自国の文化圏内での言動であることからさほど気にはなりませんでした。今作はインドが舞台である為、物語の設定上そのような言動にしているのだと思いますが、少々鼻につく感じがします。

また、最後には3人とも抱えていた荷物をすべて捨てていくシーンがあり、これは兄弟それぞれが心に抱えていた問題を視覚的に荷物に準えて捨てていくのだと思いますが、言うほど大した問題を彼らは抱えていなかったのではと感じますね。3人が仲違いするほどショッキングなイベントが背景にあるようにも感じませんし・・・。とはいえ、鼻につく部分やキャラに重みが無いにしても人間描写は良いですね。大きな成長は無いけど僅かばかり気がつき、それぞれを許す部分が「家族再生」のオチになっているのがウェス・アンダーソンらしくて・・・。

プロローグにジェイソン・シュワルツマンとナタリー・ポートマンによる短編「ホテル・シュヴァリエ」があるのですが、これがなかなか良い出来です。わずか10分程度の話ですけど。とくにナタリー・ポートマンが良いです。本編でウェス・アンダーソン作品では常連のビル・マーレイとアンジェリカ・ヒューストンがこれまた良い味を出しています。

しかし、ダージリン急行ってオシャレですね。日本だとブルートレインになるのですかね?
あんな列車に乗ってみたいですよ。

 

ユージュアル・サスペクツ
ユージュアル・サスペクツ
  • 発売元: パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
  • レーベル: パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
  • スタジオ: パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
  • メーカー: パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
  • 価格: ¥ 1,500
  • 発売日: 2006/09/08
  • 売上ランキング: 1584
  • おすすめ度 4.5

監督:ブライアン・シンガー
出演:スティーヴン・ボールドウィン、ガブリエル・バーン、ケヴィン・スペイシー、ベニチオ・デル・トロ
監督ブライアン・シンガーと俳優ケヴィン・スペイシーを有名にした傑作と言っても過言ではないでしょう。最近はアメコミ作品の監督が多いシンガーですが、90年代はサスペンスが多かったですね。その中でも今作は抜きん出た出来だと思われます。フラッシュバックを多用した展開の為、時間軸がわかりにくいかもしれませんが、その手の手法を使う作品の中では脚本の出来が良い為、わかり易い部類に入ると言えますね。

その出来の良い脚本に芸達者な俳優たちが多数出演している為、非常に良いバランス感覚を生み出しています。唯一わからなかったのはピート・ポスルスウェイト演じる弁護士コバヤシの配役ですかね。劇中彼の事務所がでて「小林」と表記されていますが、どうみてもピート・ポスルスウェイトは日系には見えませんよ(笑)。日系の弁護士にする必然性が感じられなかったのですが、カイザー・ソゼたる人物の右腕という存在ではピート・ポスルスウェイトの存在は確かに良い配役かと思います。

公開から10年以上経っているので、出演者は皆若いのは当然ですけど、ベニチオ・デル・トロの線が細いこと細いこと(笑)。その細さがチンピラ役にピッタリなので笑ってしまいますよ。

今さら思うのが、カイザー・ソゼがガブリエル・バーン演じるキートンやスティーヴン・ボールドウィン演じるマクナマスら5人を集めてヤマをやらせるのに“自ら動く”必要があったのか?と言う部分に引っ掛かっています。今まで幻の存在で居たことがカイザー・ソゼたる人物の存在価値だったのではないかと思うのですが・・・。

 

「ミスト」

Posted In: . By kazutov sinofsky

ミスト
ミスト
  • 発売元: ポニーキャニオン
  • レーベル: ポニーキャニオン
  • スタジオ: ポニーキャニオン
  • メーカー: ポニーキャニオン
  • 価格: ¥ 3,416 (14% OFF)
  • 発売日: 2008/09/17
  • 売上ランキング: 376
  • おすすめ度 3.5

監督:フランク・ダラボン
出演:トーマス・ジェーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ローリー・ホールデン
フランク・ダラボンによるスーティヴン・キング原作の映画化第3弾。映画でのスティーヴン・キング作品はいくつか観ているのですが、原作そのものは読んだことが無く、フランク・ダラボンに限ってはホラー系が多いキング作品でも感動作に特化した傾向があったので、今回もそのようなものだと勝手に思いこんでいたのですが・・・久しぶりに怖い作品でした。スリラーですねまさに。

結論から言うと原作を知らないのでラストのオチ自体はOKだと思います。ただ、オチに到る背景が「宇宙戦争」のような唐突さがあったので、拍子抜けというか脱力と言った印象を持ちましたね。ラストまでの勢いはなかなか良くできていて、“霧”に隠された何かが「外的恐怖」だとすると、大半の舞台であるスーパーマーケットに取り残された人々が平静を保てられなくなり、破綻を来す「内的恐怖」が巧く表現されているかと思います。とくに外的恐怖の視覚的な演出がさきに挙げた「宇宙戦争」や「クローバーフィールド」に近い臨場感のある恐慌を表しているのが良いです。しかしそれよりもマーシャ・ゲイ・ハーデン演じる狂信的な骨董品店主の発言で平静を失った人々を煽動して内部の恐慌を生み出すところは人間の醜さが滲み出ていて、後味が悪くなっていきます。この演出はかなり良いですね。

フランク・ダラボンの作品には「希望」が根幹にあるので好きなのですが、今作は正直「絶望」のウェイトの方が大きいですね・・・。

 

「クラッシュ」

Posted In: . By kazutov sinofsky

クラッシュ ディレクターズカット・エディション
クラッシュ ディレクターズカット・エディション
  • 発売元: 東宝ビデオ
  • レーベル: 東宝ビデオ
  • スタジオ: 東宝ビデオ
  • メーカー: 東宝ビデオ
  • 価格: ¥ 5,040
  • 発売日: 2007/02/23
  • 売上ランキング: 23895
  • おすすめ度 4.5

監督:ポール・ハギス
出演:ドン・チードル、サンドラ・ブロック、マット・ディロン、テレンス・ハワード、ブレンダン・フレイザー
ダニエル・クレイグ版007の脚本や「ミリオンダラー・ベイビー」、「父親たちの星条旗」などのクリント・イーストウッド作品の脚本で脚光を浴びたポール・ハギスが監督をした栄えある第1作目の作品が本作。近年の作品ではかなり良質な出来だと思います。病めるアメリカを複数の登場人物で巧くコントロールしながら描き、閉塞感や絶望感を醸しつつも救いのある姿を表現している点が見終わったあとに深い余韻を残します。

群像劇の為、登場人物は多く一見雑多な印象を持ちますが、抑揚の効いた演出で複数のパートを巧くつなぎ合わせていますね。マット・ディロン演じる差別主義のライアン巡査にセクハラ紛いな仕打ちを受けたテレンス・ハワード演じるキャメロンとクリスティン夫婦がこれをきっかけに2人の関係が崩れていく姿や、ライアン・フィリップ演じるハンセン巡査も同僚のライアンから影響を受けてやがて思いもしない出来事を引き起こしてしまう展開が他のパートと複雑に絡みながらも難解な展開には運ばず、ごく自然な流れで物語をまとめているのがとても凄いです。

とにかくパートが多いのですが、それそれの展開も多岐に渡っていてシナリオがよく練られているのがわかります。ポール・ハギスの最新監督作「告発のとき」は実話ベースの物語ですが、これまたよく練られた内容でここでも病めるアメリカを表現しています。DVD化されたらぜひ買いたい作品かと思いますね。これからもポール・ハギスの作品は注意が必要ですね。

 

「フィクサー」

Posted In: , . By kazutov sinofsky

フィクサー
フィクサー
  • 発売元: 東宝
  • レーベル: 東宝
  • スタジオ: 東宝
  • メーカー: 東宝
  • 価格: ¥ 2,953 (26% OFF)
  • 発売日: 2008/09/26
  • 売上ランキング: 265
  • おすすめ度 3.0

監督:トニー・ギルロイ
出演:ジョージ・クルーニー、ティルダ・スウィントン、シドニー・ポラック
原題マイケル・クレイトン。原題に主役の名前がタイトルになる作品は意外と多いですね。「ドニー・ブラスコ(フェイク)」、「ジュリー・マグワイア(ザ・エージェント)」など他にもありますが、日本の市場だと原題ではイメージが付きにくいのか、内容を喚起させるタイトルに変更されているケースが殆どかと。個人的には原題でまったく問題無いのですけどね・・・。

それはともかく今回の「マイケル・クレイトン(フィクサー)」は法律事務所に勤める主人公マイケル・クレイトンが裏の仕事である“もみ消し”を意味する“フィクサー”として同僚が引き起こした訴訟トラブルを処理するため、自身の問題を抱えながらも東奔西走し、やがてはクライアントの大きな陰謀に巻き込まれていく姿をジョージ・クルーニーが加減の効いた演技でみせています。トム・ウィルキンソン演じる同僚の弁護士アーサーが担当するクライアントを敗訴に導く決定的証拠を掴んでしまい、良心の呵責からクライアントに反旗を翻す行為に奔ってしまう。マイケル・クレイトンが事態の収拾に乗り出すが・・・と言う陰謀型ストーリーに単なる正義感や使命感で片付けるのではなく、“フィクサー”ならではの手法でオチを付けるところが良いですね。

マイケル・クレイトン自身もフィクサーという立場に不満を抱き、表舞台である弁護士職への復帰を望んでいるが、シドニー・ポラック演じる法律事務所のボスがマイケル・クレイトンのフィクサーとしての能力の高さを認めている為、復帰は実らないでいる。また親類の借金を背負った為、こちらの解決にも追われていて全体的に燻った心境にあるのが生々しく感じられます。またこの映画で敵対する企業弁護士を演じたティルダ・スウィントンがアカデミー賞助演女優賞を受賞したのも、彼女の独白シーンや次第に追い詰められ焦っていく姿を見ると納得させられますね。自身と企業の姿勢を懸命に保とうとする姿がむしろ思わぬ展開に導いてしまうのが見応えがあります。

今回監督を務めたトニー・ギルロイは「ボーン・アイデンティティ」などのジェイソン・ボーン3部作の脚本を務めた人物でストーリーの立て方は非常に巧いと思います。また製作側でバックを務めたシドニー・ポラックやアンソニー・ミンゲラなどサポート陣容としては豪華ですね。全体的に抑えた印象を持ちますが、その抑制が巧く効いた内容かと思います。繰り返し観るのに耐えうる作品ですね。

 

裏切りの闇で眠れ
裏切りの闇で眠れ
  • 発売元: アミューズソフトエンタテインメント
  • レーベル: アミューズソフトエンタテインメント
  • スタジオ: アミューズソフトエンタテインメント
  • メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
  • 価格: ¥ 3,212 (19% OFF)
  • 発売日: 2008/08/22
  • 売上ランキング: 3288
  • おすすめ度 4.5

監督:フレデリック・シェンデルフェール
出演:ブノワ・マジメル、フィリップ・コーベール、ベアトリス・ダル
パリの裏社会を描いたハードなノアール系作品。R-18指定でもあります。スタイリッシュというのではなく、ストレートな表現の為の、R-18の指定が入っているのでしょうね。序盤にマイケル・マン監督の「ヒート」のような銃撃戦があり、なかなかリアルで緊迫した雰囲気があるのですが、裏社会に生きる人間が主役の為、それらの行為は意外と淡々と描かれているように感じますね。また性描写もかなり過激なので、このあたりもR-18指定の制約がかかった理由のひとつでしょうね。

今作品は裏社会がテーマですが、警察との対立が主ではなく、同業それも身内のいざこざから抗争へと発展していき、一匹狼的立場を取っていたブノワ・マジメル演じるフランクがどのように生き延びるかを描いているのが面白いですね。一匹狼といってもオリビエ・マルシャル演じるジャン・ギィとパートナーを組んでいますが・・・。内部抗争なので全体的なスケール感は小さいのですが、それに反して登場人物は意外と多く、各キャラクターの描写が少々粗いです。下敷きとなっている裏社会の描写は緻密ですが、尺の関係なのか人物像が浅く散漫なのが若干残念なところかと。終焉に向かってのまとめ方も性急で、やっつけ仕事的に感じてしまいますね。ただ、小物等通好みの描写が多いのもこの作品の魅力とも言えますね。

 

アメリカン・ギャングスター
アメリカン・ギャングスター
  • 発売元: ジェネオン エンタテインメント
  • レーベル: ジェネオン エンタテインメント
  • スタジオ: ジェネオン エンタテインメント
  • メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • 価格: ¥ 3,032 (24% OFF)
  • 発売日: 2008/08/27
  • 売上ランキング: 204
  • おすすめ度 3.5

監督:リドリー・スコット
出演:デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ
70年代のアメリカで実際にあった話をベースにしたリドリー・スコットの最新作。出演は共演が「バーチュオシティ」以来12年ぶりになるのかな? ともにオスカー・俳優であるデンゼル・ワシントンとラッセル・クロウが実在の人物を好演している。

デンゼル・ワシントン演じるフランク・ルーカスが雇い主であったバンピーの死後、麻薬の新しいビジネスモデルを構築して瞬く間にトップに君臨するのが立身出世物語として面白い。70年代の小売業界は中間業者を介さずに直接製造元から仕入れる、いわゆる「中抜き」でパラダイムシフトしたのをヒントに麻薬マーケットにそのモデルを導入していく過程がフランクの機転の良さと行動力が映し出されている。反対にニュージャージーの警察に属するラッセル・クロウ演じる刑事リッチー・ロバーツは私生活では元妻と息子の養育権で争う傍ら、夜学に通って司法の道を目指している。私生活はボロボロで、オンナ癖が悪く表面上の印象は宜しくはないが、当時警察全体を蔓延っていた汚職にはいっさい手をつけず、周囲からは疎まれている。そのような環境下で麻薬捜査を行うわけだが、当然賄賂を享受している同僚からの妨害を受けたりして、フランクの立身出世にワクワクしながらもリッチーの置かれている立場にも感情移入させられるのが面白い。

2時間37分と長丁場だが、ダレることなく、適度な緊張感を持っているのはリドリー・スコットならではといったところでしょうか?今回のDVDは当初から10数分長いエクステンデッド版も収録されていているので、発売後にリリースされてイラっとくるのは避けてくれた模様(笑)ですね。相変わらず映像は素晴らしく、70年代のニューヨークの町並みとか小道具、ファッションや音楽などどれもセンス良くまとめられているはさすがといったところでしょうか。映像だけでも観る価値はありますね。

 

『キング・アーサー』

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キング・アーサー ディレクターズ・カット版
キング・アーサー ディレクターズ・カット版
  • アーチスト: クライヴ・オーウェン
  • 発売元: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • レーベル: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • スタジオ: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • 価格: ¥ 2,940
  • 発売日: 2005/01/21
  • 売上ランキング: 20349
  • おすすめ度 3.5


『キング・アーサー』
監督:アントワーン・フークア
出演:クライブ・オーウェン,キーラ・ナイトレイ,ヨアン・グリフィズ

アーサー王と円卓の騎士の物語のベースとなった史実を再現したという大作。
ジェリー・ブラッカイマー製作とあって大作感はありますね。劇場で観た時はクライブ・オーウェンの表情が乏しすぎるせいかカリスマ性が微塵にも感じられず、残念な映画だなーと思ったのですが、DVDでディレクターズ・カット版が出た時に再び観て、改めて残念だなと思い至りました。脇役は魅力的な部分が見え隠れしていて、個人的にはこちらに注意が行ってしまいましたよ。

『ファンタスティック・フォー』Mr.ファンタスティックのヨアン・グリフィズ演じるランスロット、ダニエル・クレイグ版007『カジノ・ロワイヤル』で敵役ル・シッフルを演じたマッツ・ミケルセンのトリスタン、海外ドラマ『ROME』でティトゥス・プッロ役を演じたレイ・スティーヴンソンのダゴネットが今作ではキャラが立っていたかと思います。主役のクライブ・オーウェンは好きな俳優ですが、如何せん地味すぎますね。それとグィネヴィア役のキーラ・ナイトレイも・・・。美人だと思いますが色香が足りない感じがして、後半から寧ろ痛々しくなりましたよ。

クライブ・オーウェンのアーサーはヒーローと言うよりも中間管理職的な立ち位置なので、そのあたりの苦渋さをもっと出せば良かったかも知れませんね。ちょっと居たたまれない役所は相当巧いと思いますので(笑。あまり評価してない感じですが、個人的にはかなり気に入ってます。ディレクターズ・カット版は全体的に冗長している感じもしますが、所々のアクションシーンは時代考証無視ですが、迫力がありハンス・ジマーのスコアが相まってけっこう引き込まれます。

全編ジェリー・ブラッカイマー印のオンパレードですが、監督を務めたアントワーン・フークアの“漢”臭さも漂ってきて見応えはあると思いますよ。
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「ザ・エージェント」

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ザ・エージェント デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組)
ザ・エージェント デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組)
  • 発売元: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • レーベル: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • スタジオ: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 価格: ¥ 1,980
  • 発売日: 2007/10/24
  • 売上ランキング: 5383
  • おすすめ度 5.0


「ザ・エージェント」
監督:キャメロン・クロウ
出演:トム・クルーズ,キューバ・グッディング・JR.,レニー・ゼルウィガー

青春モノ請負人キャメロン・クロウが放つ業界裏方スポ根ロマンス作品。
個人的には原題『JERRY MAGUIRE』の方が気に入っているのですが、これだと日本ではわかりにくくてNGなんでしょうね。でも『ザ・エージェント』って・・・どうなの?

それはともかく、キャメロン・クロウらしい脚本でさわやかな見応えが感じられます。。デ・パルマ版『ミッション:インポッシブル』は良かったのですが、他の作品はイマイチ自分の感性とは合わないみたいですが、ここでのトム・クルーズはイイですね。レニー・ゼルウィガーも等身大というか、どこにでも居そうな現実感のあるキャラで公開当時強く印象に残りましたよ。息子役のジョナサン・リプニッキもめちゃくちゃキュートでしたね。10年経った今では厳つい役者になってしまいましたが・・・。

それとある意味主役を喰ってしまったキューバ・グッディング・JR.。この作品で1996年のアカデミー助演男優賞を獲ってしまった時はオンタイムで授賞式を観ていて、映画のヒーローインタビューさながら叫びまくっていたのが印象に残りましたよ。映画と同じテンションでしたから会場も大爆笑。彼が劇中叫びまくったセリフ「Show me the money!」が10年経った今でも鮮明に思い出しますね。けっこうココロに刺さるセリフが多いのがこの映画が好きな理由なのかも知れません。「You complete me」とか普通女性に刺さるセリフだと思うのですが、自分で刺さってしまいましたね(笑

キャメロン・クロウの作品では最上位かと思いますがどうでしょう?
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『ダークナイト』

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ダークナイト 特別版
ダークナイト 特別版
  • 発売元: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • レーベル: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • スタジオ: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 価格: ¥ 3,024 (24% OFF)
  • 発売日: 2008/12/10
  • 売上ランキング: 3
  • おすすめ度 4.5

監督:クリストファー・ノーラン
出演:クリスチャン・ベール,ヒース・レジャー,ゲイリー・オールドマン,マイケル・ケイン

ノーラン版バットマン第二章。
ティム・バートン版よりもさらにダークでリアルな描写が高評価だった前作「ビギンズ」の世界をさらに掘り下げた重厚感ある作品です。主立ったキャストはヒロイン・レイチェル役が前作のケイティ・ホームズからマギー・ギレンホールに変更になった以外は大きな差はなく、今回も芸達者なキャスティングで見応えがあります。ジョーカー役を演じたヒース・レジャーが今作を撮り終えたあと急死したというショッキングなニュースもあり、日米問わず大きな注目を浴びた作品とも言えます。

内容は期待に応える出来だったと個人的には思いますね。前作にならぶ長尺ですが、ダレることなく緊張を維持したまま終幕まで続きます。ヒース・レジャーの圧倒的なジョーカーが劇中全体を支配しているという雰囲気が伝わってきますが、アーロン・エッカートのトゥ・フェイスの描き方がなかなか良かったかと思います。もう少し伏線を張っても良かったのかなとは思いますが・・・。。"ジョーカー"と"光の騎士"と言ったタイトルの対を為すものの描き方が巧いですね。あともう少しキリアン・マーフィーをいじって欲しかったですね。そしてワタシのおすすめ俳優ウィリアム・フィクトナー!いきなり出てきましたね。さすが名バイプレイヤー!ちょっと意味不明なキャラでしたが・・・。

前作で存在感を残したバットモービルと新しいアイテム、バットポッドには爆笑しましたよ。殺傷力が前作よりも大幅にアップしているって(笑

しかし、今回は本当にハードな内容でした。敢えてタイトルからバットマンを外したというところにクリストファー・ノーランの意図が見え隠れして、いやがうえにも次回作の期待が高まります。ぜひともこのテンションを続けて欲しいですね。

追記:ヒース・レジャーのジョーカーを観て思い出したのが、撮影中に不慮の事故で故人となったブランドン・リー主演の「ザ・クロウ-飛翔伝説-」のエリックです。ジョーカーと同じようにメイクをして素顔がわからないのですが、鬼気迫るものがあって両者に共通するものを感じました。ヒースもブランドンも病で亡くなった訳ではないので己の死期を意識しての演技ではないと思いますが、それでも儚さを感じさせられる作品かと思います。
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スーパーバッド 童貞ウォーズ
スーパーバッド 童貞ウォーズ
  • 発売元: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • レーベル: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • スタジオ: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 価格: ¥ 1,332 (10% OFF)
  • 発売日: 2008/09/24
  • 売上ランキング: 27617


『スーパーバッド 童貞ウォーズ』
監督:グレッグ・モットーラ
出演:ジョナ・ヒル,マイケル・セラ,セス・ローゲン

おバカな青春コメディ。だけど、ラストはおバカではなく甘酸っぱい記憶が刻まれるかも・・・。

セス・ローゲン関連を漁ってしたときに掘り出した個人的には傑作だと思うコメディです。セス・ローゲンと盟友エヴァン・ゴールドバーグの青春時代をベースに書いた自叙伝的作品との事で、おバカの中にもリアルな青臭いものが散りばめられている点がイイです。なにせ主人公ふたりの名前にセス・ローゲンとエヴァン・ゴールドバーグの名前を使っていますからね。

この作品を多角的に観ても耳目を引く要素が多く、マクラヴィンと警官ふたりとのやり取りだけでも別のおバカ映画が一本撮れるクオリティです。また劇中の音楽やファッションなどは70年代テイストがセンス良く取り入れられてかなり絵的にもバランスが良いのではないかと思いますね。主人公セス(ジョナ・ヒル)の少年時代の芸術には大爆笑しますよ。エンディングに出てくる芸術作品はもう笑いが止まりませんでした。

この作品は劇場公開されなかずビデオスルーになりましたが、単館公開しても良かったのではないでしょうかね? あちらのコメディは日本ウケが悪く、ビデオスルーされることが多いですが、中には公開で『俺たちフィギュアスケーター』のように客受けするものもあるので、ピンポイント的にでもイイから劇場公開してもらいたいですねー。
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『大いなる遺産』

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大いなる遺産
大いなる遺産
  • アーチスト: イーサン・ホーク
  • 発売元: 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
  • レーベル: 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
  • スタジオ: 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
  • メーカー: 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
  • 発売日: 2006/01/13
  • 売上ランキング: 21631
  • おすすめ度 4.5


『大いなる遺産』
監督:アルフォンソ・キュアロン
出演:イーサン・ホーク,グウィネス・パルトロウ

チャールズ・ディケンズの古典を現代のアメリカを舞台に翻案した作品。主演はイーサン・ホークとグィネス・パルトロウ、共演にロバート・デ・ニーロ、クリス・クーパーと豪華な面子です。監督は『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』や『トゥモロー・ワールド』のアルフォンソ・キュアロン。先述の2作からどちらかというとダークな色遣いが多い作風だと思っていましたが、今作は深い緑が全編にわたって映し出され、映像面での奥行きをうまく表現しているかと思います。

主人公フィンのエステラに振り回される姿はイーサン・ホークには意外とマッチしていますが、大人になったエステラを演じたグウィネス・パルトロウより少女時代を演じたコの方が美少女だと思ったのは錯覚でしょうか? それはともかく、今回は主人公フィンを育てた実姉の元カレであるジョーが良かったですね。クリス・クーパーがイイです。このヒトが出ている作品は自分好みが多いようです。『シービスケット』、『ボーン・アイデンティティ』や『カポーティ』、『キングダム/見えざる敵』など映画の内容そのものも良いけど、脇役として程よい存在感を現していて説得力がある演技は観ていて安心できますね。

舞台を現代にアレンジした翻案ものって意外と少ないですよね?
L・ディカプリオとC・ディンズの『ロミオ&ジュリエット』以外にありますかね?
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セント・オブ・ウーマン 夢の香り
セント・オブ・ウーマン 夢の香り
  • アーチスト: アル・パチーノ
  • 発売元: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • レーベル: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • スタジオ: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • 価格: ¥ 1,604 (11% OFF)
  • 発売日: 2006/06/23
  • 売上ランキング: 2205
  • おすすめ度 4.5


『セント・オブ・ウーマン 夢の香り』
監督:マーティン・ブレスト
出演:アル・パチーノ,クリス・オドネル

スマッシュヒット作『バーティカル・リミット』以来あまりパッとしないクリス・オドネルが心優しい苦学生を初々しく演じ、アル・パチーノが人嫌いな全盲の退役軍人役を圧倒的な演技力で魅せ、ガブリエル・アンウォーの可憐さとフィリップ・シーモア・ホフマンの厭らしさが全開した見応えある感動作です。

監督のマーティン・ブレストは寡作ながら『ビバリーヒルズ・コップ』や『ミッドナイト・ラン』、『ジョー・ブラックによろしく』と言った優れたタイトルをリリースした人物ですが、近作『ジーリ』でラジー賞を受賞してしまった経験もあります。この監督は恋愛に重きを置いた作品との相性は良くないのではないかと個人的に思いますね。『ビバリーヒルズ・コップ』や『ミッドナイト・ラン』のような軽妙洒脱な作風のほうが合っていると思いますが・・・。ただ今作は異彩を放つ作品で両方のテイストとは異なった趣きになっています。

人嫌いで全盲の退役軍人という強烈なキャラクターの持ち主とその彼の面倒をみる苦学生が年の差を超えた友情を育んでいく姿は素直に感動を受けます。また有名なパチーノとアンウォーのダンスシーンは本当に絵になります。フィリップ・シーモア・ホフマンの厭らしさが満喫できる作品は『パンチドランク・ラブ』のキャラクターに匹敵するかと思いますが、いかがでしょう?
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『デジャヴ』

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デジャヴ
デジャヴ
  • 発売元: ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント
  • レーベル: ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント
  • スタジオ: ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント
  • メーカー: ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント
  • 価格: ¥ 3,072 (23% OFF)
  • 発売日: 2007/08/03
  • 売上ランキング: 2577
  • おすすめ度 4.0


『デジャヴ』
監督:トニー・スコット
出演:デンゼル・ワシントン、ポーラ・パットン、ヴァル・キルマー

故A.J.クィネルの処女作『燃える男』の映画を監督にトニー・スコット、主演をデンゼル・ワシントンに迎え『マイ・ボディーガード』が作られ、今作も同じ監督・主演でサイエンス・フィクション度の高い内容で、トニー・スコットならではの激しいカット割りが炸裂しています(笑。

制約条件があるが画期的な監視システムを駆使して、物語冒頭に起こったフェリー爆破事件のFBIによる捜査に加わったデンゼル・ワシントン演じるATF捜査官ダグ・カーリン。事件で亡くなった被害者たちが川から陸揚げされ、その中でやや離れた場所で発見されたひとりの犠牲者の女性を見てから物語が大きく動き出します。物語にあるふたつの時間軸をつなぎ合わせる展開は非常に斬新で、タイムスリップ要素を新しい視点で捉えた点は凄く面白味がありましたが、後半の展開が個人的には物足りなくて、最後まであの監視システムにこだわって欲しかったですね。ただ、システムを持ち出して犯人を車で追跡するシーンはかなり手に汗を握りましたね。トニー・スコットの面目躍如といったところでしょうか? 

犠牲者クレア・クチヴァー役のポーラ・パットンは別嬪さんですねー。ウィル・スミスとエヴァ・メンデスのラブコメ『最後の恋のはじめ方』で見かけてから気にはなっていましたが、ちょい役ばかりでしたので今作は被害者とは言えヒロインですからねー、大抜擢ではないかと。今後の出演に期待したいです。他の共演はヴァル・キルマーとジム・カヴィーゼル。ヴァル・キルマーのとてもFBI捜査官とは思えない肥えっぷりにはびっくりさせられますね。『HEAT』の頃のシャープさが欲しいですね。ジム・カヴィーゼルは『オーロラの彼方で』の主人公ですね。今作と同様タイムスリップ要素をうまく利用した物語で、この映画も個人的に好きな作品です。他のタイムスリップ要素が強い映画はここ最近では本広克行監督の『サマータイムマシン・ブルース』が秀逸かと思いますが、いかかでしょう?
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『デイ・アフター・トゥモロー』

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デイ・アフター・トゥモロー
デイ・アフター・トゥモロー
  • 発売元: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • レーベル: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • スタジオ: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 価格: ¥ 1,490
  • 発売日: 2008/04/16
  • 売上ランキング: 2498
  • おすすめ度 3.5


『デイ・アフター・トゥモロー』
監督:ローランド・エメリッヒ
出演:デニス・クエイド、ジェイク・ギレンホール、イアン・ホルム、エイミー・ロッサム

環境問題をテーマとした壮大(荒唐無稽)なディザスター・ムービー。

監督であるローランド・エメリッヒの作品は荒唐無稽で有名ですが、個人的には好きな監督です。何れの作品もツッコミどころ満載で、「ありえねー!」としか言いようがないのですが、それでも個人的にはひっかかるものがあって毎回映画館で悶絶させられています(笑。

実際に予想されている気象モデルをベースにデニス・クエイド演じる気象学者のジャックと息子で高校の学力競技大会に出場して親元から離れたジェイク・ギレンホール演じるサム。それぞれの視点で、超絶的な自然災害を乗り越える姿を描いている点はご都合主義に助けられながらもスケール感の大きさに素直に圧倒されます。

見どころとツッコミどころが綯い交ぜになっていて、ひとりで観るよりは数人で一緒に観たほうが後での会話がいろいろな意味で盛り上がるかと思いますね。基本的にR・エメリッヒの作品は目くじら立てて観るモノではないなと思っています。と言うのも、前述したとおり壮大であるのと荒唐無稽であることが渾然一体となっていてそれは端から確信犯的に作っているのではないかと思うからです。もっとも、東京のシーンは頂けないですけどね。あれはどこのアジアですか?と小一時間ほど問い詰めたくなります(笑

また気に入っている俳優が多く、『ドニー・ダーコ』で存在を知ったジェイク・ギレンホールはファザコンでありながら同じクラスの女の子の事であたま一杯な役を好演していて、『炎のランナー』のイアン・ホルムははまり役の英国紳士&教授役を難なく演じ、『オペラ座の怪人』のエイミー・ロッサムは今作でかなり萌えていました(笑。彼女は今後期待したい女優ですねー。エメリッヒの最新作『紀元前1万年』ではこれまで以上にトンデモっぷりを発揮した楽しい作品で、今後はどのうよなテーマを持ち出してくるのか今から楽しみにしていますよ。
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イブラヒムおじさんとコーランの花たち
イブラヒムおじさんとコーランの花たち
  • アーチスト: オマー・シャリフ
  • 発売元: ハピネット
  • レーベル: ハピネット
  • スタジオ: ハピネット
  • メーカー: ハピネット
  • 価格: ¥ 2,500
  • 発売日: 2006/04/28
  • 売上ランキング: 11923
  • おすすめ度 4.5


『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』
監督:フランソワ・デュペイロン
出演:オマー・シャリフ、ピエール・ブーランジェ、イザベル・アジャーニ

老人と少年の世代と民族や宗教を超えた友愛の物語。

オマー・シャリフ演じる年老いたトルコ商人イブラヒムおじさんとピエール・ブーランジェ演じる家族に恵まれないユダヤ人少年モモ。老人と少年の交流は名作『ニュー・シネマ・パラダイス』に近いですね。『ニュー・シネマ~』の場合は“シネマ”というキーワードを通じて交流を育むのに対して、今作は“コーラン”を通じてイブラヒムおじさんとモモの関係が築かれるのですが、若干“コーラン”の必然性が感じられなかったのが残念でした。どちらかというとイブラヒムおじさんの存在自体に比重がおかれているので、“コーラン”はお題目だけのような印象を受けた為、必然性が感じられなかったのかも知れませんね。

とはいえ、イブラヒムおじさんの店でのひとこまや、娼婦との駆け引きや、オープンカーに乗ってイブラヒムおじさんの故郷までの旅するくだりは示唆に富んだ要素が多く、素直に感動させられます。少し心が渇いたときに観ると良いかもしれませんね。

直接話は関係ありませんがこの『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』のジャケ写にはある法則が隠されています。今後その法則に係わることをエントリしていきたいと思います。別のブログでも言及しているので、ご存じの方も居ると思いますが、個人的には非常に面白かったので、こちらのブログでも取り上げたいと思います。

乞うご期待!(笑
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カラー・オブ・ハート
カラー・オブ・ハート
  • アーチスト: トビー・マグワイア
  • 発売元: ショウゲート
  • レーベル: ショウゲート
  • スタジオ: ショウゲート
  • メーカー: ショウゲート
  • 発売日: 2004/09/10
  • 売上ランキング: 40580
  • おすすめ度 5.0


ジューン・カーター
監督:ゲイリー・ロス
出演:トビー・マグワイア、リース・ウィザースプーン

『ビッグ』や『デーヴ』の脚本家だったゲイリー・ロスが初監督を務めた、色の表現に新鮮味を打ち出した良作です。

トビー・マグワイアとリース・ウィザースプーン演じる双子の兄妹デイヴィッドとジェニファーがTVリモコンを巡ってケンカしている最中にデイヴィッドが観ていたモノクロ番組「プレザントヴィル」の世界に入り込んでしまい、ふたりの行動が規律的な白黒の世界に“色”という概念を与えて、プレザントヴィルの人間達が変化していく課程が面白いです。

トビー・マグワイア演じるキャラクターはたいてい純朴な青年が多く、この作品もご多分に漏れずその路線なのですが、『スパイダーマン』でブレイクする前の為、純朴さがより現実味を帯びているように感じます。この作品とラッセ・ハルストレム監督の『サイダーハウス・ルール』で注目を浴びるようになり、上述の『スパイダーマン』でスターの座に躍り出たと言っても過言ではないかと思いますね。リース・ウィザースプーンも同様で、この作品と『ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!』、『クルーエル・インテンションズ』で注目を浴びて、『キューティ・ブロンド』で大ブレイクを果たしたのは有名な話ですね。2005年の『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』では伝説のカントリー歌手ジョニー・キャッシュの2度目の妻となったジューン・カーター役で2005年度のアカデミー主演女優賞をみごとに受賞した実力のある若手女優です。

彼ら以外にも共演陣は豪華で、“プレザントヴィル”世界での母親を演じるジョーン・アレンはマット・デイモンの当たり役ジェイソン・ボーン・シリーズの『ボーン・スプレマシー』と『ボーン・アルティメイタム』のCIA指揮官役でも敵対しながらもジェイソン・ボーンに理解を示す重要なキャラクターを演じていて、総じて慈愛に満ちたキャラクターを演じるのが多いようです。また父親役のウィリアム・H・メイシーも特徴的な顔立ちでルックスだけでも印象に残りやすいですが、コーエン兄弟の『ファーゴ』やスピルバーグの『ジュラシックパーク』でもユニークなキャラクターを演じています。あと完全な脇役ですが、ポール・ウォーカーも出演していますね。

物語は監督同様脚本も務めたゲイリー・ロスの真骨頂とも言うべき“誠実”と“純真”が全面的に打ち出された内容だと思います。『ビッグ』や『デーヴ』しかり、今作の後で監督した『シービスケット』も根底には同じテーマが含まれているかと思いますが、いかがでしょう?
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『コンタクト』

Posted In: , . By kazutov sinofsky

コンタクト 特別版
コンタクト特別版
  • アーチスト: ジョディ・フォスター
  • 発売元: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • レーベル: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • スタジオ: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2007/11/02
  • 売上ランキング: 33191
  • おすすめ度 5.0


『コンタクト』
監督:ロバート・ゼメキス
出演:ジョディ・フォスター、マシュー・マコノヒー

カール・セーガン原作のベストセラーを『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のロバート・ゼメキスが監督した硬派SF作品。主演はジョディ・フォスター。

基本的にSFは好きなジャンルで荒唐無稽な内容でもOKなのですが、今作のような骨太な内容はさらに好きなタイプです。地球外知的生命体との接触をテーマにした作品が多い中、大げさな演出を排し極めて現実的なアプローチで取り組んだ為、やや地味な印象を受けますが、地に足が着いた脚本と実力のある出演者たちの存在によって他の同じテーマの作品とは一線を画す結果になったと思います。

また、主演を務めるジョディ・フォスターの演技力は言わずもがな、共演陣の充実さがこの作品の魅力のひとつかと言えます。パトロン役のジョン・ハートを始め、『グリーンマイル』や『交渉人』などアメリカの善人を体現したデヴィッド・モース、過去のエントリでも挙げた『ヒート』でのビジネスマン麻薬ディーラー役や特殊部隊のスペシャリストぶりが様になっていた『ブラックホーク・ダウン』、ポール・ハギス監督の『クラッシュ』、近作ではスマッシュヒットを放った『俺たちフィギュアスケーター』など多岐にわたる作品で名バイプレーヤーとしてその地位を確立した(?)ウィリアム・フィクトナーや、親子揃って超個性的な俳優であるジェイク・ビューシィー(父親はゲイリー・ビューシィ)などがストーリーを盛り上げているかと言えます。

地球外知的生命体の描き方は個人的にはこれがベストではないかと思いますね。同じテーマの作品はどうしても表現上大げさになりがちで、ステレオタイプ化している中では今作の見せ方はアリかと思います。ただ、日本の描き方は・・・やっぱりそういうイメージなのか?って印象を受けますけどね(笑 よくテーマや硬派なスタイルの近似性として『2001年宇宙の旅』が比較されますが、あちらは壮大というか哲学的なスタンスが強いため、今作の方が気楽に観られると思いますがいかがでしょう?


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リトル・ミス・サンシャイン
リトル・ミス・サンシャイン
  • アーチスト: アビゲイル・ブレスリン
  • 発売元: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • レーベル: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • スタジオ: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 価格: ¥ 2,979 (25% OFF)
  • 発売日: 2007/06/02
  • 売上ランキング: 1724
  • おすすめ度 4.5


『リトル・ミス・サンシャイン』
監督:ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス
出演:グレッグ・キニア、トニ・コレット、スティーヴ・カレル

崩壊寸前家庭の再生を描いた風刺の効いた作品。
グレッグ・キニア演じる独自の成功論を振りかざし、“負け組”を否定する父親やアラン・アーキン演じるいつもラリっている祖父、スティーヴ・カレル演じるゲイで自殺未遂した伯父、ポール・ダノ演じる父親に反発して無口を通す長男、アビゲイル・プレスリン演じるミスコンに挑戦したがる長女、てんでばらばらな家族を孤軍奮闘で支える母親をトニ・コレットが演じています。(トニ・コレットがワタシと同い年だったとは・・・どうでもいいハナシですが)

脚本は新人ながらも2006年度アカデミー脚本賞を受賞したマイケル・アーント。全編皮肉と笑いと感動で綯い交ぜたその力量はとても新人とは思えませんね。とにかくこの脚本のデキの良さが出演俳優のキャラに相乗効果を来たし、どの俳優も活きているのが判ります。なかでもこれまた同年のアカデミー助演男優賞を獲得したアラン・アーキン演じるヘロイン中毒の爺さんが最高で、中盤で孫娘のアビゲイル・プレスリンに語るシーンにはぐっときます。

また『40歳の童貞男』や『エバン・オールマイティ』などで一躍売れっ子になったスティーヴ・カレルが演じる伯父も他の出演作同様“声にならない叫び”をここでも発揮し、本来であれば物語の展開上あまり必要性を感じない伯父というキャラクターを他のキャラクターの持ち味を引き出す触媒役として立ち位置を明確にしているところが見所ですね。とくに冒頭の食事シーンでそのツカミが受け取れ、のっけから爆笑させられます。

この作品のように家族再生がメイン・テーマで、観る者にそのテーマを押し付けさせないスタンスは非常に珍しいかと思いますね。掲げるテーマを押し付けないのは意外と難しいかも知れません。強いて近い作品と言えば、テイストがかなりエッジが効いているかもしれませんが、ウェス・アンダーソン監督の『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』だと思うのですが、いかがでしょう?
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